開催要旨

減災デザイン プランニング コンペ 2013

 「減災」とは、避けることのできない自然災害に対し、その被害をできるだけ少なくするための備えという新しい考え方です。デザインの視野からこれを捉えたコンペティションを行います。「減災」と「デザイン」との関係性の洞察を深め、「減災力」の浸透のためにデザインされた、これからの社会に貢献する提案をお寄せください。
 メインテーマ、およびサブテーマに対して取り組む提案を求めます。

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■テーマと部門の設定:

●メインテーマ:「減災デザイン」

減災。災害からの被害を少しでも減らすため、
(私たちが日頃から)できること・使えるものをデザインしよう!


●サブテーマ:

A モバ防・スマ防

モバ防=モバイル防災、スマ防=スマート防災)

携帯電話のように「日頃から持ち運んで使用するものであるからこそ、いざという時にも力を発揮する備えの性質」の意を込めた造語です。そんな新しい用品やシステムを考えよう。


B サステな減災

サステナブルと減災の接点

私たちの暮らしは今、いかに省エネ、省電力でも豊かにあれるかが、大きな課題となっています。この具体化は、いざというときへの備えや対応力も高めるものとなるでしょう。サスティナブルと減災の接点を模索しよう。


メインテーマ、およびサブテーマテに対して取り組む提案を求めます。 (ただし、提案では提案者はサブテーマの部門を特定する必要はありません。各部門に該当する提案としての評価は審査側で判断します。)


※ 「メインテーマ」は、このコンペの基本的なコンセプトです。このキーワードをテーマに、これからの社会にとって価値のある提案をお寄せください。「デザイン」という言葉の本来の意味に則り、提案のジャンルは問いません。
※ 「サブテーマ」は、メインテーマを促進するために効果的と考えられるキーワードを、コンペ開催ごとの時流にあわせて設定します。

■開催概要:

名称:減災デザイン プランニング・コンペ 2013
応募〆切※:2013年1月17日
最終審査・結果発表※:2013年3月
実施体制:
  主催:芸術工学会 特設委員会U「減災と復興へのデザイン力」
  協力:減災デザイン・プロジェクト
     阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター
※詳しくは、応募要項を参照ください。

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テーマ解説(詳細)

「減災デザイン」コンペ要旨(詳細):

「減災」とは、災害を防ぐ防災という考え方ではなく、避けることのできない災害に対して、被害をできるだけ少なくするための備えという考え方※1が込められた新しい言葉です。 デザインの視野から「減災」を捉えると、災害を「非日常の特定なもの」と捉え、運悪く当たってしまった時の特別な備えを推奨するようなこれまでの「備えの姿」を改め、災害は「日常生活の延長の上で、誰もがいずれ被る可能性のある事象」として捉え、日ごろ普通に使用しているモノが、いざ災害発生時、被災時にも有効に機能することを、あらかじめ設計の段階からもぐりこませておくような考え方を育むことにつながると考えられます。 日本社会の転換点とも言える大きな災害、3.11を経た私たちが、これからのデザインを考える時、「減災」と「デザイン」との関係性の洞察を深め、モノ・コトをデザインする際のコンセプトにおいてこの「減災」へのアプローチを明確に意識することが、強く求められているのではないでしょうか。 このコンペでは、社会への「減災」の浸透をデザインの力で後押し、これからの社会に貢献することを意図するデザイン提案を募集し、優れた提案を選出、表彰し、また多くの方に情報公開します。そしてこれらの提案がいずれ実社会に機能していくようなきっかけづくりを担います。 これを通して、今復興に向けた日々を過ごす被災地の支援、そして明日、別のどこかが被るかもしれない新たな自然災害の備えに、「デザインをする立場」として、貢献していきたいと考えます。


メインテーマ:「減災デザイン」

このコンペシリーズの基本的なコンセプトとして、このキーワードを掲げます。 このキーワードには、「減災を後押しするデザイン性」といった意味が込められています。単なる流行や消費を促すデザインではなく、真に社会のために役立つ価値が込められたモノ・コト。個人と、個人のまわりにある社会をつつみ、守る設計。いざという時に役に立たないのではなく、いざという時にこそ日頃以上に能力を発揮するような潜在力を秘めた、普段使いのもの。デザインの力で、日頃から接するモノやコトに、そのような機能をもたらすことができないでしょうか。「普通の暮らしにおいて役立ちつつ、いざというときにも使える」。そのようなデザイン性が、減災デザインのひとつの目標と考えられます。 また「減災」と「デザイン」の関係性においては、上述に限らない幅広い発案の可能性もあると考えられます。このコンペが、各位の自由な発想で、これからの社会のためのプランニングを提示しあえるフィールドになればと願っています。


サブテーマ部門: 「モバ防・スマ防」=「モバイル防災・スマート防災」

2012コンペのサブテーマとして、このキーワードを掲げます。 近年の防災観として、非常時に備えその効果を発揮するためには、いかに日常と非日常とに接点を持たせるかが大切という考え方が広まりつつあります。「もしもの時のための、いつもの備え」といった視点は、減災デザインを進めるための大切な視点と言えるでしょう。 社会生活で不可欠な日常アイテムとなった携帯電話(モバイルフォン)や、その進化版と言えるスマートフォンのように、今、いつでも身につけ、利用・活用している新しいツールが生まれてきています。このような道具が、いざというとき、防災・減災にも役立たせることができる※2なら、それはきっと「減災デザイン」を具体的に進める一コマとなるでしょう。「モバ防・スマ防」のキャッチフレーズには「常に携帯する、だから非常時に役立つ」という発想の象徴の意を込めています。 むろん、電子機器やそのアプリケーション開発に限ることではありません。昔ながらのアナログな道具にもそのような可能性はあるものと考えられます。すでに「非常持ち出し品」※3として一般的に選定されている物品を、見つめ直し、デザインの視野からこれを捉え直すことも、ひとつの方法かと思われます。 このコンセプトからインスパイアされる発案を追求してみてください。


※1:「防災」と「減災」の差異についての例示

「堤防を築き、だから安心、と考える津波への備え」は、従来の防災か。これに対し、 「堤防は築いたが、想定外の津波は必ず起こりうる。全ての津波を跳ね返す堤防を作り得ないとしたら、他に何をすべきか」を考えるのが減災か。 「阪神・淡路大震災」の被災者からの経験値で、いざという時の上下水道の普通に備え、常日頃から風呂の水は使用後もため置くという習慣が広まりつつある。「災害時も破損しにくいインフラシステムへの改善」が防災策なら、「それでもやはりストップすることがある電気、ガス、水道に備えて、個々のレベル・社会のレベルで何をしておくか」が減災策か。 防災訓練で捉えれば、主催側はともかく、一般参加者は受け身的・義務的にだけ担うような訓練で、実際には役に立たないものを従来型とすれば、誰もが積極的に取組み、いざという時には確実に効果を発揮するような訓練プログラムを作り出せたなら、それは減災型と言えるだろうか。 「減災」の考え方には、今の備えに安心しきり、いざという時に太刀打ちできないというのではなく、いつもどこかで備えている「人の姿」がイメージされる。私たちは、どのように備える「いつも」を過ごすべきだろうか。


※2:携帯型の防災用品

非常時に持ち出すものとして、玄関などに置く「防災バッグ」に対し、常日頃から持ち歩く・使うものの中に、いざという時の機能が含まれたものは、既製でも見受けられる。アーミーナイフや、ソーラー充電ライトのキーホルダーなど。携帯電話の液晶画面を暗闇で、懐中電灯がわりにせめてもの灯りとして使った経験を持つ人も多いだろう。 阪神・淡路大震災の経験者の中には、多くのポケットの着いたベストに必要と思われるグッズを全て収納し「防災ベスト」として常に身に付ける、といったアイディアを実践する人もいる。 まずは自分自身がいつも持ち歩いているバックの中身を見つめ直してみよう。そこに非常時にも役立たせることのできる付加価値をもたらす余地はまだ多くあるのではないだろうか。


※3:非常持ち出し品

「非常持ち出し品」については、大半の自治体の防災啓発の中でも公開されているので、現在の社会における推奨品については多く情報を得ることができる。ここでは阪神・淡路大震災の被災者の声を反映させて編集されたリストをひとつの事例として紹介するので、参考にしていただきたい。【https://www.dri.ne.jp/useful/checklist/】このリストに掲載されている物品にはひとつひとつ、必要性や必然的な備えの理由があることは確かである。よって、持ち出し品の具体的なアイテムについて、デザインの視点で再設計をもたらすことも、このコンペ提案へのひとつのフィールド、形であるとは考えられる。 ただ、「非常持ち出し品を備えよう」という発想だけでは、備えとして万全であるとは言い切れない点についての答えは見えてこない。例えば、備えたとして持ち出せるのか、あらゆる災害に応じた万能の持ち出しバックなどあるのか、その時外出していたらどうなるのか、・・・etc。それゆえ、実際には備えがそれほど普及しない、備えたとしても実際に役立たせられるのかどうか疑問、といった目的を達成しきれない状況がつきまとう。 「減災デザイン」「モバ防・スマ防」の発想では、この従来の「非常持ち出し品」の考え方が狙っていたことを、より確実に推進するために、工夫することや根本的な発想の転換といった視点も大切にすべきかと思われる。



■芸術工学会について

当コンペティションは、「芸術工学会」が主催しています。

当会につきましては、芸術工学会のホームページにある、設立の趣旨、沿革等をご覧ください。

https://sdafst.or.jp/



■減災デザイン・プロジェクトについて

当コンペティションは、「減災デザイン・プロジェクト」が推進しています。
前回2012年のプロジェクトの成果は、2012コンペ結果発表でご覧いただけます。
減災デザインロゴ

当コンペティションは芸術工学会が主催しています。